Shopify UXチームメンバーによるデザインコミュニケーションのポイント
はじめに
プロダクトのUI/UXを改善していく中での大きな課題の一つが、コミュニケーションなのではないかと思います。
「改善案のメリットが思ったように伝わらない」
「自分が最善だと思う案ではなく、他の案が採用されがち」
こういった経験をされたことのあるUIデザイナーのかたも多いのではないかと思います。また、課題感は伝わったものの重要度までは伝えきれず、結局改善されずじまいになってしまった経験もあるかもしれません。これらの問題にかんして、参考になるアプローチをご紹介したいと思います。
ShopifyのUXチームメンバーが示した考え方
デザインコミュニケーションの基礎
デザインに関するコミュニケーションについて、ShopifyのUXチームメンバーでプロダクトデザイナーのKazden Cattapanは以下の4つのスキルが重要だと述べています。
1. プロセスではなくプロダクト起点で話す
2. 問題について説明する
3. 問題と解決策をリンクさせる
4. 解決策がなぜ重要なのかを説明する
今ある問題、そして考えうる解決策と重要性について、ステークホルダーに理解してもらうためにはこれらの4つのステップが重要だと説明しています。そこで、以これらの中身について、簡単に解説していきたいと思います。
プロセスではなくプロダクト起点
まずステークホルダーとコミュニケーションを取る際に気をつけるべきステップとして
「結果に至る過程の話ではなく、プロダクト起点を心がける」
ことをあげています。
ほとんどのステークホルダーにとっての興味は過程ではなく、あなたの決定(decisions)がプロダクトに対してどれだけ影響を与えるのかにあるからです。
結論に至るまでの過程を伝えられるようにしておくことは重要なことですが、コミュニケーションを取る場合には細かな方法や過程が話の中心にならないように注意する必要があります。
問題について説明する
次のステップとして、他のステークホルダーと問題を共有する準備をします。このとき、もっとも重要なのは「問題について最も熟知しているのは自分である」という意識で準備を行うことだとCattapanは述べています。
他のステークホルダーは必ずしもその問題について詳しいとは限りません。もし、あなたが解決策を採用して欲しいのであれば、自分が責任者として、今ある問題について詳しく説明する必要があります。
問題と解決策をリンクさせる
第三のステップとして、あなたの解決策がその問題に対してどの程度関連しているのかを示していくことになります。
この作業を効率的に行うためには、途中で行った決定を認識する必要があります。あなたの無意識な考えや途中でくだした決定を具体化し、それまでの考えをメモなどに書き出しておくことが有効です。
絵や図形などを使わず言葉だけでデザインについてまとめてみるというのも良い方法です。なぜなら、最終的な目標は問題のソリューションをステークホルダーに対して「言葉を用いて説明する」ことだからです。
解決策がなぜ重要なのかを説明する。
今ある問題とあなたの解決策との関連性を説明しただけでは十分ではありません。なぜなら、ステークホルダーはあなたの提案がどれだけの価値を有しているのかを理解し、実行に移すかどうかの判断を下す必要があるからです。
そのため、あなたはあなたが提案した解決策の重要性について説明する必要があります。
これが最後のステップです。
価値を説明するには、まず、あなたの解決策がユーザーに対してどのように影響を与えていくのかを文章化することが重要です。あなたが下した全ての決定について、「これはユーザに対してどのような影響を与えるのか」を自分自身に尋ねてみましょう。そして、それらを3つめのステップと同様に、言葉で書き出し、まとめます。
ちなみに最も良いのは、代替案についても同様のことを行い、今回の提案が他の案に対してどのような優位性があるのかを示せるようにしておくのが理想です。
そうすることで初めて、ステークホルダーはあなたの案と他の案とを比較し、実行すべきかどうかの判断を下すことができるようになるからです。
ステークホルダーの置かれた立場についての理解
ステークホルダーについて
ステークホルダーと一口に言っても、プロジェクトは多種多様なステークホルダーの影響を受けています。
- あなたの所属しているチーム
- 外部のステークホルダー
- リードや経営層
大きく分けて、上記の3つのグループに分けることができます。
そして、それぞれのステークホルダーについて理解し、そのうえで提案を行うことが必要になります。
あなたの所属しているチーム
これはあなたが普段お互いにやりとりをしているチームのことを指します。プロジェクトを通してもっとも多くの時間を共有し、多数のコミュニケーションを交わすことになります。
チームメンバーはそれぞれに優先課題を持っており、日々それらの課題に取り組んでいます。そのため、あなたがデザインについて提案したいと考えるのであれば、それがどの程度効果的で、どれだけの価値を生み出すことができるのかを説明しなくてはなりません。
また、スケジュール調整等が必要な場合にはプロダクトマネージャー等の管理者に対してアプローチする必要もあります。
さらに、デザインの意図をコンテンツデザイナーに伝えるときは、ユーザーリサーチからの洞察、意思決定が既存のコンテンツモデルとどのように一致または適合するか、ソリューションが製品の他の領域とどのように一致するか、デザインがユーザーの認知的負荷をどのように軽減するかを理解できるようにすることに重点を置きます。
外部のステークホルダー
外部のステークホルダーは、日常的なあなたの提案等についてはあまり関係がありません。しかし、彼らは良い意味でも、悪い意味でもあなたに影響を与えることがあります。
外部のステークホルダーとしては、他のプロジェクトチームやビジネスの利害関係者、デザインを利用する内部クライアントといったグループなどがあります。
彼らは評価基準も違えば、ロードマップも異なるため、さまざまなアプローチが必要になります。
しかし、これらのグループとの関係性については、プロジェクト初期には見通しを立てることも難しく、それぞれがどのように影響し合うのかも判断するのが困難です。時間が経つにつれ、知識や経験によって見通しが立てやすくなり、コミュニケーションの地盤が整えられていきます。
リードと経営層
リードや経営層はあなたのプロジェクト全体に影響を及ぼすことが可能です。また、プロジェクトに関する決定権を持っている人たちです。
これらのステークホルダーとのコミュニケーションの機会はなかなか設定できず、共通認識を形成することが難しい場合があります。また、彼らの多くは個々のプロジェクトの詳細にまで立ち入ることを良しとしない場合もあるため、できる限り簡潔に説明し、フィードバックを得る必要があります。
提案した内容がビジネスや組織全体での目的に合致している必要もあります。そうすることで信頼を得やすくなり、彼らと同じ目線からの提案であることを示すことができます。
まとめ
以上がShopifyチームメンバーによるデザインコミュニケーションの方法についての内容の簡単な要約になります。
どういうふうに自分の提案を固めていき、そして、どのような利害関係者にそれらをどういったアプローチで説明していくのか。その手順について、参考になる部分も多いかと思います。
また、元の文章についても結論は特別書かれていませんので、アプローチの指針として考えるのが良さそうです。すでに確立された方法論があるのであれば、それはそれで良いと思います。上記はあくまで考え方の一つですので、参考になる部分、活用できそうな部分をうまく取り入れていただければと思います。
参考URL:https://ux.shopify.com/describing-your-work-is-a-critical-design-skill-934923147f83