コロナ時代のIT活用とWeb開発
2020年以降の動向
コロナの流行に伴い、様々なサービスや新規プロダクトがこれまでに生まれてきました。特に、ライブや演劇などのオンライン配信サービスやVRを活用した工場視察、リモートワーク関連といった、人と人との接触が前提だった分野に関しては、新しいサービスが続々と出てきています。
では、今後この流れはどうなっていくのでしょうか?
おそらくワクチンによる予防接種が進めば、コロナもある程度落ち着き、従来のサービスが見直されるタイミングがやってくるのではないかと思います。しかし、そのいっぽうで、新しく生まれてきたオンラインサービスがそのタイミングでなくなってしまうかと言われると、それも考えにくいと思います。
むしろ、これまで以上にITの活用が進むのではないかと個人的には考えています。なぜなら、IT技術の活用を通して地理的な制約を取り除くことにより、様々な企業がグローバルに事業を展開したり、優秀な人材を採用したりといったことが可能になるからです。
また、これはグローバルな話に限ったことではなく、国内についても同様のことが言えます。
たとえば、「東京にいる優秀な人材を採用したい」と長野県にある企業が考えたとします。従来であれば、応募者に長野まできてもらうか、もしくは採用担当者が東京まで出向かない限りは面接すらできませんでした。また、実際に採用が決まったとしても、業務のために引越しをしてもらわなくてはならず、受け入れる側にとっても働く側にとっても大きなハードルがありました。そういったケースに対してITをフル活用した施策を講じることで、先ほどのハードルが解決できてしまう可能性があるのです。
また、手軽にECサイトを構築できるサービスも増えてきており、全国の消費者に向けて商品を提供するといったことも以前より容易になってきています。さらに、最近注目のShopifyと呼ばれるサービスを使ってECサイトを構築すれば、日本以外の顧客に対して商品を販売する越境ECを構築することもできてしまいます。
IT事業を始めるには?
では、IT事業を始めるにはどうしたら良いのでしょうか?
まず、最初に覚えておかなくてはいけないのが、「ほとんどのITサービスが失敗する」という事実です。
失敗理由については色々考えられ、競合が次々と参入してきてダメになる場合もあれば、集客でつまずいてしまう場合もあります。また、インフラ面のトラブルが原因で、ユーザーが離れてしまうといった場合も存在します。
そのため、IT開発では失敗しないことではなく、中長期的にPDCAを回すことを前提としたサービス運営をしていくことになります。
そして、このやり方と相性の良い考え方が「スモールスタート」という考え方になります。
「スモールスタート」とは
「小さく始めて、うまくいかなければ撤退、うまくいきそうなら追加で資金を投入していく」
こういった考え方のことを「スモールスタート」と言います。
要は大きな博打をするのではなく小さな挑戦の中から成功するタネを探していくというものです。
この考え方にもとづくことで、リスクを抑えつつ、効果を最大限にしていくようなサービス開発が実現できます。
これとは対照的に、一番やってはいけないのが「社運をかけて新規事業を立ち上げる」というサービス開発です。
こういったやり方をしてしまうと、方針転換も容易ではなくなり、リスクが非常に高くなってしまいます。
IT事業において大切なことは、「大きな成功をしようとするのではなく、失敗を織り込んだ上でチャレンジを繰り返すこと」なのです。
ちなみにですが、個人開発の事例ですと、成功するサービスに到るまで数十〜数百のサービス立ち上げを経験しているといった話が出てきます。それくらいITサービスというのは予測がつきづらい分野なのです。
従来の開発手法がスモールスタートを難しくしてきた
ただ、これまでは「スモールスタート」に基づいたやり方がなかなか難しい一面がありました。
というのも、技術力はもちろんのこと、WEBサービスの開発には多額の初期投資が必要だったからです。なぜなら、まず開発の着手金として費用の半額を先払いし、完成後にのこり半額を支払うというやり方が業界の慣例的におこなわれてきたからです。ちなみにこの方法の場合、システムの規模等に左右されますがおおよそ1000万〜1500万ほど初期費用としてかかってくることになります。
しかも、WEBサービスの場合、一度作ればそれで終わりということにはなりません。
もし新たな機能追加があれば、そのたびに費用の半額を先に払い、完成後に残りの半額を支払うというやり方を繰り返すことになります。
ですが、これは「完成品を納品する」という考え方をもとにして作られた仕組みであり、機能を見直しながらサービスを育てていくといった現代の考え方には適していません。現代におけるサービス開発は中長期的な視点で物事を捉え、持続的に資金を投入しながら開発をしていくやり方のほうが一般的です。
また、最初に半額を支払ってしまうことについては他の問題があります。それは事業撤退の判断に大きな影響を与えるということです。すでに支払ってしまった多額の開発費は取り戻せなくなってしまうため、たとえ、開発したサービスが振るわなくてもズルズルと続けてしまうことになりがちです。
現代の開発パターン
では、現代における開発手法はどういったパターンがあるかというと、大きく分けて3つあります。
まず1番目のパターンは企業独自の開発チームを立ち上げるパターンです。
既存の社員を教育もしくは新たにエンジニアを採用し、自社に開発部門を立ち上げた上でサービスの開発を行います。
しかし、この方法は雇った従業員は固定費となってしまうため、経営の重荷になってしまいます。
また、開発を行なっていくうえで専門的なノウハウも多く、非IT企業が一朝一夕にできるものでもありません。
エンジニアの採用や社員教育が進まないと、うまく事業展開ができないという問題もあります。
次に2番目のパターンとしては、いわゆるSESと呼ばれる会社に依頼し、専門的な知識をもったエンジニアを派遣してもらうという方法があります。
この場合、専門的なノウハウや知識を持った開発チームの構築が比較的容易に可能となります。さらに、固定費ではなく変動費となるため、状況に応じた判断がしやすくなります。とはいえ、完全に外部のスタッフだけに任せてしまうわけにもいきませんので、必要最低限のスタッフは自社で用意する必要があります。また、ケースによってはスタッフ個々人と契約を結ぶ形になってしまい、契約事務が煩雑になる可能性もあります。
最後の方法としては、弊社のように月額で開発業務を受託している会社に外注するというのがあります。この場合、窓口は一つとなるため、契約事務の煩雑さはありません。また、専門的なスタッフが開発にあたりますので、自社でスタッフを採用したり、教育したりする必要もありません。さらに月額による支払いですので、多額の着手金を用意する必要もなく、途中で開発を止めれば、それ以上の費用も発生しません。もちろん、この形式だったとしても、コミュニケーションは必要になりますので、最低限の担当者を自社で用意する必要はあります。ですが、最初の方法に比べれば、圧倒的に手軽な方法だと言えます。
3番目のパターンのデメリットとしては従来の方法と比べて開発の総費用が見通しづらいというのがあります。とはいえ、現代の開発は中長期的になるのが一般的ですので、そもそも総費用で捉えること自体が難しいと言わざるを得ません。むしろ、総費用という捉え方ではなく半年や一年間といった期間で費用を見積もるほうが、サービスのランニングコストとして捉えるほうが実情にあっていると言えます。
どれが一番最適な方法なのか?
とはいえ、どの方法にも一長一短があり、どれが一番いいかというのは一概には言えません。
IT企業であれば、ノウハウ蓄積や保護の観点から1番めのパターンが理想的だとされていますし、すでにある開発部門のリソース不足を補いたいといった場合には2番目のパターンがもっとも向いていると考えられます。それとは対照的に、3番目の方法は、「本業がIT以外にあり、開発部分ではなくビジネスの部分に注力したい」という企業に最適な方法かと思います。
また、まず最初に月額制でサービスを開発し、軌道に乗ってきたら1番目の方法への移行を目指しつつ、足りないスタッフを二番目の方法で補充していくといったやり方も考えられます。開発したサービスにある程度の競争力がつけば、一緒に働きたいというエンジニアも増えてきますので、いずれ2番目の方法に頼ることなく自社内スタッフだけでの開発・運用が可能になっていくかと思います。
まとめ
以上のように、それぞれのパターンには個々の特徴があり、組み合わせて採用することもできます。
また、従来の開発パターンが欠点ばかりかと言われるとそうではなく、たとえば自治体のシステムのように一度作ったらなかなか機能追加がされないといったシステムの場合は従来のやり方のほうが向いている場合もあるかと思います。どの手法が優れているかといった議論は重要ではなく、もっとも重要なのはそれぞれの手法の利点を踏まえつつケースバイケースで適した手法を採用していくことだと思います。そうすることで、自社に適した開発体制を敷くことができ、要望に即した事業展開が可能となるのです。